その他の肛門疾患

そのほかの肛門の病気MENU

そのほかの肛門の病気としては、
等たくさんのものがあります。

血栓性痔核(けっせんせいがいじかく)

肛門科診療で最も多い病気の1つです。
肛門縁付近の皮下血腫(血まめ)で、突然痛みと腫れが起こります。
下痢や便秘等の排便異常により肛門の血管が破れて皮下血腫(血栓)となります。
痛みが強い場合は切開して血腫を除去すると楽になります。この処置は簡単で5分位で行えます。
痛みがあまり強くない時は、内服薬や座剤、軟膏で治療しますが、治癒には1カ月前後かかります。保存的に(切開しないで)治療した場合、血栓性外痔核が発生してから数日~1週間前後で表面の皮膚が自然に破け(自潰)て、凝血塊が少しずつ溶けだしてくることがあり、新しい出血と間違えられ、驚いて来院される場合がありますが、通常は自然に治ります。

血栓性痔核 血栓性痔核

皮膚炎

肛門部の皮膚炎の主なものは、アレルギー性皮膚炎、石鹸によるアレルギー性皮膚炎、カンジダ症(真菌症)があります。
症状はかゆみがもっとも多く、痛がゆい、出血がある、浸出液で下着が汚れる等のこともあります。
アレルギー性皮膚炎かカンジダ症かによって、治療薬がまったく異なり、カンジダ培養検査をする必要があります。結果が判るまでに1週間くらいかかります。
まず、おしりの清潔に注意して、おしりを洗う時の石鹸を、皮膚に優しいものに変えてみるとよいでしょう。
明らかにカンジダ症の場合は、カンジダ治療用軟膏を使用しますが、多くの場合がアレルギー性皮膚炎であるため、初めはアレルギー性皮膚炎の治療用内服薬と軟膏(ステロイドや抗ヒスタミン薬)を使用します。
しかし、もしカンジダ症であると、ステロイド剤や抗ヒスタミン薬はかえって皮膚炎を悪くしてしまうことがあるので、必ずカンジダ検査の結果を確認しておくことが大切です。

直腸脱(ちょくちょうだつ)

下図のように、肛門上皮と直腸粘膜の境界を、歯状線とよびます。
この歯状線より奥の直腸粘膜や直腸壁全層が肛門から脱出することがあり、これを直腸脱といいます。
脱出の状態により、不完全直腸脱と完全直腸脱の2つに分類されます。

直腸脱

不完全直腸脱

直腸の粘膜のみが肛門外に脱出するもので、脱出した粘膜は下図のように、中心に向かって放射状に走る溝を呈します。高度でも、5cm以上の脱出となることはありません。

不完全直腸脱

完全直腸脱

直腸壁全層が肛門外に脱出するもので、脱出腸管の先端部に腹膜を伴うことがあります。(下図)
脱出した粘膜は、輪状の溝を呈し、脱出が5cm以上となることがあります。

完全直腸脱

不完全直腸脱の治療

不完全直腸脱の多くは痔核や直腸肛門の粘膜組織の弛緩によって起こるので、痔核切除と同様の手術治療を行います。

完全直腸脱の治療

多種類の手術法があり、場合によっては開腹して直腸の処理を行う方法もあります。
治療の原則は、直腸脱は生命をおびやかす疾患でないという前提で、より安全かつ、より有効な手術方法であることです。
代表的なものとして、Gant-三輪法(絞り染め式粘膜縮少術)があります。
これは下図のように、脱出した直腸粘膜を小さくつまんで、糸で結紮(縛る)することを多数行い、ちょうど絞り染めで行うようなことをするものです。粘膜を多数結紮することによって、脱出部の粘膜が縮少し、大部分は自然に肛門内に戻ってしまいます。この手術方法では、術後の痛みはほぼまったくありません。

三輪法

直腸膣壁弛緩症(直腸瘤)

(ちょくちょうちつへきしかんしょう)(ちょくちょうりゅう)
女性で排便障害の訴えがある場合、直腸膣壁弛緩症となっていることがあります。
自分自身で便が出せない、便が肛門で止まってしまう、浣腸をしないと便が出ない、排便の時、膣の後壁がふくらんでくる、便が後ろに飛び散る等が症状です。
直腸膣壁弛緩症は、直腸膣壁がゆるんで(弛緩して)、排便時に直腸が膣壁を圧迫膨隆するものです。
中年以降の女性に多いのですが、自覚症状のないものも多く、自覚症状がなければ治療も不要です。
しかし、排便障害のある場合は、はじめは下剤や食物繊維の摂取による治療を。これでも改善しなければ手術です。

尖圭コンジローム(せんけいこんじろーむ)

肛門周囲に2~3mmのイボが多発(たくさんできる)します。肛門上皮や直腸粘膜におよぶこともあり、時に陰嚢・陰茎や女性の陰唇・膣にまで拡がることもあります。
原因は乳頭ウイルスの感染で、性病のひとつといわれており、とくに男性同性愛者に多く見られます。
症状は、かゆみ、浸出液、排便後紙でふいた時の出血等です。放置すると、病変が拡がるため、早期に治療することが大切です。
治療はイボの切除や焼灼(焼き切る)でしたが、最近では塗り薬も開発されました。塗り薬で治ることもあります。

肛門陰窩炎(こうもんいんかえん)

肛門陰窩とは、肛門上皮と直腸粘膜の境界にある小さなくぼみですが(下図)、ここに発生した炎症で、膿瘍(ウミの溜まり)を形成しないものを肛門陰窩炎といっているようです。膿瘍を形成すれば、肛門周囲膿瘍の状態となります。
症状は痛みで、排便と関係なく痛いのが特徴です。肛門周囲膿瘍に比べると軽い痛みです。

肛門陰窩炎(こうもんいんかえん)

毛巣瘻(もうそうろう)

肛門後方の臀裂間(左右のおしりの谷間)に膿瘍(ウミの溜まり)と難治性の瘻孔(細長い穴)を形成する病気で、皮下に毛髪が発生し、感染を繰り返すことにより起こります。
痔瘻と異なり、瘻孔は肛門とのつながりを持ちません。
毛深い男性に多い病気です。
治療は排膿のみでは治らず、入院して毛巣瘻根治手術をすることが必要です。

膿皮症(のうひしょう)

肛門周囲臀部のアポクリン汗腺(脇の下や性器周囲・肛門周囲等にある大汗腺)の化膿です。ときに多発性の皮膚瘻があり、複雑痔瘻のように見えます。
しかし、瘻管は皮下の浅いところにあり、肛門とのつながりはなく、痔瘻との鑑別は容易です。
原因菌は黄色ブドウ球菌と溶血性連鎖球菌等による、急性化膿性炎症です。小さなものでは抗生剤投与と消毒による治療、広範囲なものでは切開や切除が必要です。

壊疸性筋膜炎 (FOURNIER’S GANGRENE)(えそせいきんまくえん)

肛門周囲の特殊な化膿性しかも壊死性(組織が死んでしまうこと)の病気であり、早期診断と緊急入院治療が必要です。進行が早く、病変は肛門周囲から会陰部、腹部、大腿等に拡がってゆき、急速に全身状態が悪化し、治療が遅れると、死亡率が30~50%に達します。
症状は肛門周囲の痛みや腫れ、皮下気腫(皮下にガスが発生する)、皮膚のblack spot(限局した黒色斑が臀部皮膚に発生)で、皮膚の発赤は初期には少ないのが特徴です。初期に発赤が少ないのは、病変が皮下の深い部分の筋膜に沿って拡がるため、病変の進行に比べて皮膚への症状の発現が遅れるからです。
皮膚を切開排膿した時に、予測したような量と、性状の排膿が見られない時は、強く壊疸性筋膜炎を疑う必要があります。切開して出てくる排出液も、通常の膿とは異なり、悪臭があり、褐色で、漿液性(水のようにサラサラしており粘性がない)であり、切開部にガスが溜まっていることもあります。
原因は嫌気性菌(とくにBacteroides fragilis)と、グラム陰性桿菌との混合感染です。
併存病変として糖尿病や動脈硬化等があることがあります。
治療は切開排膿と壊死部の除去およびドレナージ(膿や浸出液が排出しやすいようにすること)、および抗生剤投与、抗ショック療法、併存病変(糖尿病等)の治療です。

肛門部癌

(文献 城 俊明他:肛門部癌 臨床科学 25巻9号 P,1205、1989年)
肛門部に発生する癌は、通常の大腸癌(結腸直腸癌)に比べて多彩であり、癌細胞の型や癌の進行形式、治療方法が大きく異なり、単純に扱えないものです。
癌細胞の種類により、直腸型腺癌、肛門腺由来腺癌、痔瘻に合併した腺癌、扁平上皮癌、そのほかいくつかの癌に分類されます。
治療には入院が必要で、局所切除、直腸切断術(人工肛門設置)、放射線療法等が行われます。

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