ピロリ菌外来

ピロリ菌とは

ピロリ菌最近「ピロリ菌」という言葉をよく耳にするように成りました。現在ではピロリ菌が胃がん発生の主な原因であると解明され、注目されています。ピロリ菌は日本人の6,000万人が感染しており、年齢により感染率に差があります。20代は10%以下、30代は20%以下ですが、60代だと70〜80%です。原因は加齢ではなく、生まれ育った時の衛生環境です。上下水道などが整っていなかった頃に育った人は高確率に感染しています。感染経路は経口であり、感染している親が赤ちゃんに食べ物を口移しするとか、あるいは糞便に汚染された水・食品を摂取して感染します。衛生環境の良かったはずの頃に生まれた若年者にもピロリ菌感染がありますが、これは母子感染であると考えられてます。感染者の約8%は胃がんを発症すると考えられてます。

胃がんの 99%はピロリ菌感染がベースにあり、ピロリ菌に感染している人は感染していない人に比べと、20〜30倍位胃がんになる確率が高いのです。塩分の過剰摂取といった食生活や遺伝などによる、ピロリ菌に感染していない人の胃がんもまれに(1%程度)有ります。また、ピロリ菌は慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の主な原因でもあります。さて、ピロリ菌感染と胃炎・胃がんの関係について説明します。ピロリ菌が感染すると、ピロリ菌が作るさまざまな分解酵素が胃粘液層を破壊し粘膜による保護を失った上皮細胞が胃炎を起こします。さらに菌が分泌する毒素が上皮細胞を傷害して、炎症を増悪させます。この胃炎が⻑期化し慢性胃炎となり、胃酸分泌する胃腺が縮小、粘膜が薄くなり萎縮性胃炎となります。萎縮性胃炎になると胃がんが発生しやすくなるのです。

今、ピロリ菌は薬で退治できます。退治(除菌)すれば、胃がんになる確率が減ります。慢性胃炎の患者さんに対して、除菌をしたグループとしないグループを約10年間追いかけた調査により除菌をしたグループは胃の萎縮が進まないということが明らかになっています。また、早期の胃がんを 胃カメラ下で完全に切除した後にも、胃内の他の部位に2年間で約5%の人に早期胃がんが発症することが知られていました。しかし、除菌すると3年後の胃内の他の部位のがんの発生は3分の1まで減少することが報告されてい ます。60歳位で早期の胃がんを発症した人であっても除菌することによって胃がんの発生は抑制されるのです。

ピロリ菌について少し詳しいこと

ピロリ菌とは正式にはヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori)と言い、ヒトなどの胃に生息する細菌です。自然界では動物の胃のなかだけで増殖可能です。胃の内部は胃液に含まれる塩酸によって強酸性であるため、従来は細菌が生息できない環境だと考えられていました。しかし、1983年にオーストラリアのロビン・ウォレン(John Robin Warren)とバリー・マーシャル(Barry James Marshall)により胃の中で生息するピロリ菌が発見されました。2005年には、ヘリコバクター・ピロリの発見の功績によって、彼ら二人にノーベル生理学・医学賞が授与されました。ヒトの胃の中に細菌がいることは彼らの発見以前から学者に疑われていましたが、細菌培養方法が古く、培養できず発見に不十分で細菌学的に厳密には確認出来ませんでした。発見当時、慢性胃炎や胃潰瘍はもっぱらストレスだけが原因であるという説が主流でありましたが、マーシャルらはピロリ菌がこれらの疾患の病原であるという仮説を提唱しました。当時すでに、これらの胃炎・胃潰瘍の慢性化と胃がんの発生が関連することは知られていたため、この仮説は本菌ががんの発生に関連する可能性があるとして注目されました。

stomach_cancer_img08胃酸の中では細菌は生息しにくいのですが、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生し、この酵素で胃粘液中の尿素を分解、アンモニアを発生させて局所的に胃酸を中和し、酸をやわらげることにより胃で生息します。ウレアーゼ以外にも、本菌に独特な毒素が、粘膜および胃上皮細胞を傷害します。また菌体自体に存在する物質も様々の反応を引き起こし、異常細胞発生の防御力を低下させ、癌の発生に繋がるとも考えられています。このように慢性炎症が発癌をおこすことはScience(2004;306)に報告されています。この画期的と言われている研究では、マウスにピロリ菌を感染させて人工的に慢性胃炎、胃がんを造る事に成功しました。この発癌モデルで、胃がんは胃の粘膜細胞から発生するのではなくて、骨髄細胞(胃粘膜の損傷を修復するために動因された幹細胞)から発生することがわかりました。これは、ピロリにより胃に傷ができる。傷がひどいと修復するために「幹細胞の動因」が起こるということです。ピロリ菌を取り除いても胃に動員された幹細胞は、やがて胃がんのもとになる。

癌を予防するなら「幹細胞の動因」の前に除菌してしまうのが最善です。

クリニックブログ当院の口コミを見る当院の口コミを書く
Tel045-477-1011